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English in マルタブログ!

Yet Another JUGEM.
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「 白鳥の湖」
クラシックバレエといえば、先日スイスのローザンヌで行われたバレエコンクールで日本人の男性が優勝して話題となっています。彼はまだ10代の若者です。
バレエといえば「くるみわり人形」「コッペリア」そして「白鳥の湖」これが3大演目。
歌舞伎で言えば「勧進帳」のようなものです。
その「白鳥の湖」をテーマに作られた最近の映画が「ブラックスワン」でした。この映画でナタリーポートマンは、見事にアカデミー主演女優賞を獲得しました。
これはかなり怖〜〜い映画でした。
個人的理由もあって入れ込んで観ていた私には、とっても恐ろしい映画でした。
ストーリーはこんなです。

ナタリーポートマン演ずる若きバレリーナーは、優秀で真面目な美しい女性です。お母さんが将来有望とされながらナタリーを妊娠してバレエを断念し、それ以来つきっきりで娘に自分の夢を託します。
ある日、演出家が言います。
「今度の白鳥の湖は全く新しい演出で行う。
それに適したプリマを選出する。」
そして何とナタリーが選ばれます!
ナタリーは泣きながら母親に電話をします。
「ママ、選ばれたの!信じられないけど。」
、、、、、
そして、そこから彼女の苦悩は始まるのです。
まず、同僚たちの嫉妬。
「どうやって獲得したの?あいつと寝たの?」
「アバズレ!」
そして公演へ向けての猛練習の中で、演出家から浴びせられる言葉の数々。
「白鳥を踊らさせたら君にかなう者はいないよ。」
「、、、、、ありがとうございます。」
「しかし、問題は黒鳥だ。」
そう、「白鳥の湖」には白鳥が愛した王子を惑わせ奪おうとする黒鳥が出てくるのです。しかもそのどちらも同じプリマが演じ分けて踊る事を要求されるのです。
「君の黒鳥は最低だ。
君は誰かと恋に落ちた事があるのか?」
「いえ。」
「男と寝た事は?」
「いえ!」
「だったら今日帰ったらベッドの中で自分でするんだ!
いいか、命令だ!」
ナタリーは顔を真っ赤にして泣きそうになります。

その頃から(前から?)彼女の神経はすり減り、
手を何度も何度も洗い、爪の横の皮をむき、
むき過ぎて血が出るところを母親に見つかり、
背中にも血が出るほどの引っ掻き傷を作り、
そうなりながらも家では毎晩、
ストレッチで脚のケアを怠らず、
トウシューズの手入れも怠りません。

翌日の稽古で、演出家は相手役の男性に、
「君はこの娘とヤリたいと思うか?」
男性は笑って「いえ。」
「今日の稽古は終わりだ。帰っていい。」
男性バレリーナーはすんなり察したかのようにナタリーに言います。
「ゆっくりあいつとお楽しみだね。」
演出家の部屋に呼ばれたナタリーに、演出家は強引にキスをします。
「もっと深くだ。舌をからめるんだ。」
ナタリーはたまらなくなって、この絶対権力者である演出家の舌を噛んで逃げ帰ります。

家に帰ると、指先から流れる血はもっと多くなり、
背中も血だらけになっているのが鏡にうつります。
母親の顔、演出家の顔、同僚の女の子達の顔、
中でもスペイン系の演出家お気に入りの娘のあざわらう顔、、、、
それらは全て幻想で、、、
やがて幻想と現実の狭間で、
かわいそうに、彼女は壊れて行くのです。

あ〜、怖い怖い。
この映画が言いたい事は、彼女の精神崩壊ですが、
映画の中の演出家が彼女に求めたもの、
それは「官能」です。
白鳥だけ踊れたのでは「白鳥の湖」は出来上がらないのです。
クラシックな演出では黒鳥をもっとシンプルに白鳥と比べて「悪」「嫉妬」「陰謀」の象徴として捉える事もできるかもしれませんが、この映画では黒鳥をもっと「官能的」な存在として描きます。
確かに、スペイン系の娘の踊る黒鳥の魅惑的な事!
どんな男の子もメロメロにさせる力を持っています。
そしてそれは、稽古だけでは決して身につかないもの。
難しいけれども、芸術表現の頂点で必須なもの。
それが「官能」です。

もし世界が「清潔」で「善良」で「信心深い」ものだけであったなら、それらのものは認識されません。そこに「悪」があり我々が存在はわかっているけれども認めたくないような汚いものがあるからこそ、「清潔」や「善」は認識されます。

人類学者でエリックサテイの音楽で私と接点があった
故、山口昌男のこんな名文を思い出しました。

「マリア様をたたえる祝祭のパレードにまぎれて、
民衆のポケットから金をスリ取り、
収穫した金をたんまり懐に入れて、
おさらばする前に、聖母マリア像の足下に、
チョロっと口づけをする悪党。
彼こそ、私が最も心魅かれる存在なのです。
悪党に神のご加護を!」







| 映画 | 10:29 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |









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