Yet Another JUGEM.
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調律師、という仕事。

先日、ピアノを弾いていて久しぶりにピアノ線が「パキン!」

といって切れてしまいました。

で、今日はちょっと自慢話。

「私の指もまだまだ捨てたもんじゃない。」と思いました。

(金属疲労ということもあるしね。)

 

 

 

ピアノ線は1本1本が約80キロの力で引っ張られています。そのピアノ線が一つの音に3本。高音域になるほど、当然ピアノ線は細くなり、短くなりますから、高音のピアノ線は切れやすくなります。

いつもの調律師のSさんに電話をして、その日はSさんではない方が雨の中を来て、切れたピアノ線を張り替えてくれました。

 

作業が終わってから、お話を伺いました。

「久しぶりにこのピアノを触って懐かしかったです。」とK さん。

うちのスタインウエイは1930年製の古いグランドピアノです。蓋をあけると中に、ケンプとアシュケナージという二人のピアノの巨匠のサインがある特別なピアノです。そのサインを見て懐かしかった、のかな?と思ったら、それだけではなかったのです。

「音がまろやかに木枠と共に鳴るんですよね。」とKさん。

ここから俄然、話に熱が入りました。

「新しいホールに入れられた新しいグランドピアノが良く鳴るようになるには使用頻度にもよりますが2、3年かそれ以上かかります。しかし、その新しいピアノが10年経過したら、このピアノのように良く鳴るか、と言ったらそうではないんですね。このピアノのように鳴るようにはならないでしょう。」とKさん。

「そんなにこれはいいピアノなのですか!」と私。

 

 

(da capo、ということはケンプが1961年にこのピアノを弾いて、

 1976年にまた帰って来た、ということなんでしょう。)

 

 

1930年という一番、スタインウエイがいい職人でいい木を使用して製造していた時のピアノ、とは知っていましたが、そんなにあちこちで違うピアノを弾くわけでもない私にはその素晴らしさはよくわかってないのかもしれません。

何とモッタイナイ!

ヴァイオリンは使用する木が命とはよく聞きますが、ピアノも考えてみれば木の箱に入った楽器です。その木、そして塗装、そんな事までが音に影響してくるのだそうです。

 

 

ピアノ調律師の戦場、といえばショパンコンクールです。

その話になると、「私の個人的に思うショパンの音と演奏とは全く異なる世界なんです。」とKさん。

それは私も同感です。

「とにかく、明るく華やかに、そしてクリアに鳴る楽器、調律が求められる。演奏もしかりです。コンクールで優勝するショパンの世界みたいなものがありますね。」とKさん。

(そんな風潮にして来た審査員の責任も大きいと思うけど。)

(何事もパッと見栄えがするものと本物とは違うと思うけど。)

 

今の時代、画像も音質もデジタル化されて、

それはそれは鮮明になりました。

それに慣れてしまった視覚や聴覚には、それ以下の鮮明度のものには物足りなさを感じてしまいます。

濃い味に慣れたら、だしの効いた薄味はもの足りなく感じるのと同じです。

ではその鮮明な色彩が自然界の色なのか、

と言ったら、そうではない。

デジタル化された音楽をヘッドフォンやイヤフォンで聴く、

その音質が最高の音質なのか、

と言ったら、そうではないのです。

 

Kさんという人が調律師という仕事を職業として人生を歩んで来られた事に何か感動を覚えた一日でした。

ヴァイオリンの名器なら持って出かけられますが、ピアノはそういうわけには行きません。ミケランジェリというピアニストは世界中、自分のピアノを運んでコンサートをしたそうで、しかも時には自分のピアノを置いてホールの音響が気に入らないとコンサートをキャンセルしたそうですが、そんなわけにも行きません。(プロならどんなピアノでも弾け!とも言いたいけれど。)それも無茶な話です。

(今、話題のマルタ島には船で行って、帰って来ましたが....。)

せいぜいここに来る生徒さんたちと楽しむくらいしかできないけれど、

この名器が私の所にあるのは調律師Sさんと父のおかげです。

Sさんとは、かれこれ40年のお付き合いになります。

| YOKO | ピアノ | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |









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